【はぐちさん_ルーツビア】僕達はすでに十分頑張っている【感想】
「はぐちさん」はすごくいい漫画だと思います。
何が良いっていったら、大きくは2つ。
ひとつは、異世界の生き物と一緒に暮らすと、いつもの退屈な日常が違って見えるよということ。
異世界の生き物は、現代社会の我々と違った価値観を持ち込んでくれます。
均質な意見、価値観に覆われた社会というのは、非常に息苦しいものです。
例えば、仕事に生きる人がいてもいいけれども、そんな価値観ばっかりでは息苦しい。
趣味こそ大事だとか、友達と遊ぶことこそ重要だとか、ゴロゴロして何もしたくないとか、多様な価値観があって、その中から自分の好きな価値観を選べたほうが、人間はのびのび生きられる気がします。
そんな均質な価値観を相対化するのに、異世界の生き物(異文化の人々)は一役買ってくれます。
例えば、ネコと暮らすというのも、一つの手です。
phaさんがブログで「ネコを飼ったり、子供と暮らしたりすると家での人間関係がうまくいく」って言ってた気がするんですけど、こういう理由でなんだと、自分は思ってます。
それから、「よつばと!」もこの構造でできてると思います。
よつばちゃんの発想は、我々の価値観の斜め上をいき、違った価値観を持ち込んでくれます。
例えば、自分達にとって、雨は嫌な天気ですし、セミはうるさいだけです。
しかし、よつばちゃんにとっては、雨は「すっげー!」ですし、ツクツクボウシは「夏を終わらせる妖精」です。
違った世界の見方が提示されて、ちょっとだけ、雨もセミも悪くないかもな、なんて思えてきます。
(ところであずませんせい。14巻まだですか?)
良いところのもうひとつは、「僕達はすでに十分頑張っている」というメッセージです。
唐突なようですが、現代社会は明らかに、我々に大きな負担を強いています。
仕事も、キャリアを積み重ねることも、勉強も、育児も、親の介護も、身の回りの家事も何もかも、24時間内でやれと。
社会は我々に、「お前たちはまだ頑張れる。もっと頑張れ。」というメッセージを発信し続けます。
それに対して、「はぐちさん」は、「そんなことはない。君たちはすでに十分頑張っていますよ。」と言ってくれている気がします。
我々の大多数は、大した社会的地位もないし、大きな仕事でもないけれども、毎日ヘトヘトになるまで頑張っています。
十分、社会を支えるために体を張って頑張っているんです。
表紙の「えらいよ」って言葉が、そんなヘトヘトの僕達を祝福してくれます。
えらいんです、僕達は。
僕達は、「すでに僕達は十分頑張っている」と胸を張っていいんじゃないかと、思うんです。
ルーツビアにも、僕は同じことを感じます。
ルーツビアの主人公は仕事でヘトヘトのOL達です。
そんな疲れ果てたOL達を、居酒屋のうまいビールと料理が、
「今日もおつかれさん。頑張ったね。」
と祝福してくれる。そういう漫画だと思うんです。